7月7日:『海賊の日本史』
執筆日時:
『海賊の日本史 (講談社現代新書)』(山内譲 著) を読み終えたところです https://t.co/zwVEst5RaZ pic.twitter.com/iH5pVKP5cG
— Daruyanagi Go(Office 付き) (@daruyanagi) July 7, 2018
海賊の本は見つけたらちょろちょろ呼んでるんだけど、著者の本は他にも読んでた。Kindle で目に付いたのを適当に買ったので、最初は気づいてなかったけど……読み進めているうちに既視感を感じたw
第一~四章では、比較的著名な海賊を個別的に取り上げるが、日本の歴史上の海賊はそれに尽きるものではなく、史料上に断片的に姿を現すだけの海賊も多数存在する。そこで、終章では、第一~四章で取り上げた海賊も含めて、古代から中世に至る海賊の時代全体を振り返り、時代の移り変わりの中で海賊像がどのように変化していったのかをたどりたいと思う。そして最後には、その時代が終わった後、海賊が日本の社会に何を残したのかについても考えてみたい。海賊像の変化をたどるに当たっては、海賊を、土着的海賊、政治的海賊、安全保障者としての海賊、水軍としての海賊に分類し、それを基本にして海賊の役割の変化と歴史的変遷を論ずることにしたい。また、海賊が残したものをみるに当たっては、造船、航海術、捕鯨などの分野や海に乗り出す精神に注目したい。
藤原純友、松浦党、熊野海賊、戦国時代の水軍(村上氏、九鬼氏、武田・北条の水軍)をとりあげながら海賊の類型を時代ごとにサラッと把握し、最後にそれを分類・分析する感じ。前2冊よりは包括的というか俯瞰的で、結構ためになった。文中にも少しとりあげられてたけど、『匪賊の社会史』を思わせるところもあったかな。
- 作者: エリック・ホブズボーム,船山榮一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: 文庫
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『匪賊の社会史』はだいぶ前に呼んだので記憶がちょっとあやふやだけど、そこで盗賊は
- 体制内:貧者が富める者から奪う(義賊としてはネズミ小僧のような富の再分配効果を持つ)
- 体制間:体制の及ばない領域で活動し、移動するものから奪う(義賊としては体制からのあぶれ者を吸収したり、不正義な・脆弱な体制を打倒する)
のような役割を担っていたと思う。これは海賊にも当てはまるようで
- 体制内:農業基盤を持たない海の民による略奪・寄り船(難破船から物資を接収する)活動、特殊技能を買われて大名に仕官する海賊(九鬼氏、武田・北条の水軍)
- 体制間:中央への年貢運送の失敗・着服による海賊化(藤原純友、陸だったら陳勝・呉広的な)、域間交易から金銭を徴収(「関」と呼ばれる海賊たち)、他の海賊から身分を保証するための相乗りをする海賊(安全保障、村上氏など)
のような感じになるだろうか。瀬戸内では後者が、それ以外では前者が活躍したのは、沿岸における体制のプレゼンスの大小が影響したのかなと思う。瀬戸内では長い海岸線を似たような実力の大名が分け合っていたけれど、それ以外の地域ではこそこそと盗賊働きをするか、体制に取り込まれてその一部(水軍)となるしかなかったのではないだろうか。
本書ではもう少し細分化して、
- 第一のタイプ:さまざまな目的で船旅をする人、年貢や商品の海上輸送に携わる人を襲って金品を奪う者としての海賊(略奪者としての海賊、寄り船)
- 第二のタイプ:荘園領主や国家権力に抵抗する者。そのときどきの状況が生み出す政治色の濃い海賊で、藤原純友はこのタイプ(← この発想はあまりなかったので興味深かった)
- 第三のタイプ:航海の安全を保障する者としての海賊。主に第一のタイプから身の安全を保障する(関を設けることもある)
- 第四のタイプ:時の権力とかかわりを持つ水軍。戦国末期は大名の寡占化により、比較的小規模な海賊は取り込まれ、このタイプに収斂していった
みたいな感じに分けている。時代を追うごとに海賊は第一・二の「悪いイメージ」から第三・四の「イメージのよい」へと軸足を移していったらしい。個人的には体制の小極化・一極化のなかで、第一のタイプは権力で押さえつけられ、第二・第三のタイプは住処とする「体制間」を失っていき、最後に残された生き方・第四のタイプも体制に取り込まれ消えていった感じを受ける。海賊に対する山賊は、その陸軍戦力が「特殊技能」たりえなかったがゆえに、第四のタイプとして大領主のもとで一定の独立性を保つのが難しかった。ゆえに、第三のタイプにならずんば従属あるのみ、となってしまったのではないだろうか。
- 作者: 山内譲
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/06/20
- メディア: Kindle版
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