『大和燃ゆ 』
執筆日時:
- 作者: 八木荘司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2013/03/23
- メディア: 文庫
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角川書店 冬の大型フェア(期間限定60%OFF)が開催されてます - なか日記 でセールやってるのを知って購入。白村江の戦いを描いた古代史の物語。
上巻ではいい感じに挙国一致体制を敷いて、大唐国と互角以上に渡り合ってみせる! っていう感じのノリだったのに、額田王をめぐる中大兄皇子と大海人皇子の確執だとか、策謀家・蘇我赤兄の暗躍などでだんだん雲行きが怪しくなってくる。戦いの結果は、皆さんご存じのとおり、日本側の大敗で終わったのだけど、この本のクライマックスはむしろ戦いよりも、戦後処理で坂合部石積が則天武后と正面対決するシーンにあるのかも。
――この一戦に敗れれば、この敗戦の戦後処理を誤れば、日本は終わる。
という古今未曾有の情勢に、いかに当時の日本人がいかに立ち向かったかが臨場感豊かに描かれていると思った。
なのでなおさら、則天武后がよくわからんことを言いだしたり(後代の僕らからすると、ちょっと暗示深いのだけれど)、ラストで急転直下の兄弟仲直りが実現するあたりが、拍子抜けというかなんというか。蘇我赤兄の脳内をもうちょっと紙幅を割いて表現してもらえると、もっとよかったんじゃないかなーって思った。あれじゃ、単なるお邪魔虫で、中大兄皇子がやたら遠慮していたのが腑に落ちない感じ。なぜ額田王に手を出そうとしたのかも、もっとドロドロっと書いてよかったかも。あと、阿倍比羅夫はすごく反省しろ、俺の田来津が死んじまったじゃねーか!!
朴市秦田来津(えちはたのたくつ)は、越智氏が作り出した架空のご先祖様・越智田来津のモデルになったらしい人(“えち”と“おち”、なんか似てるしね、わかる!)。白村江の戦いでは、敗れたとはいえ「天を仰いで誓い、切歯して怒りて数十人を殺し、ここにおいて戦死する」というすさまじい活躍を見せ、一人気を吐いた。
かつて中大兄皇子に逆らったのを、軍事的才能を見いだされ、抜擢されたという経緯をもつが(裏切ったことがあるのは史実らしい)、それゆえに派遣軍のなかでも微妙な立場を強いられ、十分に才能を発揮できずに死ぬことになってしまった。
もう一人の主役級・坂合部石積(さかいべのいわづみ)も、実在の人物みたい。
坂合部石積 さかいべの-いわつみ
?-? 飛鳥(あすか)時代の官吏。
白雉(はくち)4年(653)留学生として唐(中国)にわたる。天智天皇4年守大石(もりの-おおいわ)とともに遣唐使となる。天武天皇11年「新字」1部44巻を編集,14年天皇より衣と袴をさずかった。氏は境部,名は磐積ともかく。
読んでるときは架空の人物かなーと思ってたけど。おおむね史実を下敷きにし、欠けてるところは無理なくフィクションで補ってある感じ(則天武后がああいったかどうかは知らんが)。わりと面白く、ぺろっと読んでしまった。