『第二水雷戦隊突入す―礼号作戦最後の艦砲射撃』
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第二水雷戦隊突入す―礼号作戦最後の艦砲射撃 (光人社NF文庫)
- 作者: 木俣滋郎
- 出版社/メーカー: 潮書房光人社
- 発売日: 2013/01/01
- メディア: 文庫
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中身を確認せずに買ったのだけど、『キスカ島 奇跡の撤退: 木村昌福中将の生涯』 - だるろぐ でも少しふれた「礼号作戦」の話だった。精鋭を結集した華やかなりし頃の二水戦の話ではなく、一水戦を解体して残存艦を寄せ集めた、最後の二水戦の話。このころは航空機による支援ももはや十分には期待できず、すでに特攻が常態化しつつあった。木村少将率いる第二水雷戦隊が登場するのは本書の半ばぐらいになってからで、それまでは特攻機が何機出た、直掩機が何機帰ってこなかったという話ばかりで胸が痛い。
ミンドロ島の戦い(ミンドロとうのたたかい、英: Battle of Mindoro)は、太平洋戦争(大東亜戦争)中の1944年12月13日から2月下旬にかけて、日本軍とアメリカ軍により、フィリピン北部のミンドロ島で行われた戦闘である。アメリカ軍の作戦目的は、ルソン島の戦いの準備として作戦拠点を確保すること、及び全フィリピン諸島を日本軍から解放する一環としてのミンドロ島自体の奪還にあった。圧倒的に優勢なアメリカ軍の攻撃により、日本軍守備隊は全滅した。
陸軍を率いる山下中将は、ミンドロ島を捨て、兵力をルソン島に集結して反攻をかける構え。一方、海軍はミンドロ島に米軍の航空戦力がいると艦艇の自由が扼され、ひいては補給もままならないのでこれを排除してほしい。陸軍の方針と海軍の方針のかみ合わざること、日露戦争期の旅順要塞に対する方針にだいぶ似ている。まぁ、どっちをとってももはや戦況を覆すことはできなかったろうが……。
ちょっと面白かったのは、艦隊運動について割りと詳細に書かれていた点。潜水艦を警戒して大型艦の周りに広く駆逐艦を展開させたり、雷撃機来襲の恐れがあるときは大型艦の後ろに駆逐艦を並べたりと(艦隊後方から襲い掛かると、速度が相殺されて高速でも魚雷が命中させやすくなるのだそうだ)、割と忙しいのだなとおもった。
個人的ツボ。
- 瑞雲って割りと活躍したんだなぁ。「夜の忍者」
- 「大和」と間違えられる「足柄」姐さん。
- 連合艦隊旗艦設備まで整えるのに、駆逐艦に従う「大淀」さん。理由は「所詮、借り物だから」。そういうの、めんどくさいよね。
- 魚雷命中が確実になったときに「直進!」と命令したことに対して、木村少将――「別に理由はない。操舵機を握っている若い士官に『艦長の命令通りやったまでだ』と責任回避させてやらなくちゃぁ。どうせ命中するのだから」。こういうボスならついていきたいって思うよね。結果は、1本目は命中前に爆発、2本目は艦底を通過。運もついてきたw
- 「ただいまの信号は誤り。司令官、健在なり」のエピソードは本書にある。
- 九五五航空隊。最初の九は飛行艇・水上機を示し、次の五は佐世保を原隊とすることを示す。
- フネがなくても「艦隊」。陸軍で言うところの「軍団」「師団」という兵力単位としてもつかわれるんだな。
- 空母「信濃」撃沈の噂で士気低下。割りと最前線でもそういうこと知ってたんだね