『政府論の歴史とモデル』
執筆日時:
政府論の歴史とモデル (1977年) (現代政治学入門講座〈4〉)
- 作者: B.クリック,小林昭三,石田光義
- 出版社/メーカー: 早稲田大学出版部
- 発売日: 1977/01
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貴族制と民主制のベストミックス - だるろぐ でクリックという人に興味をもったので、適当に(本当に、アマゾンで適当に!)一冊古本を買ってみた。ちなみに、そのときは「B・クリック」で検索したのであまり出てこなかったけど、「バーナード・クリック」で検索したら結構いっぱい出てきた。しまったしまった。
この本はとても薄いので、一瞬で読める。
前半が歴史上存在した(および、するであろう)国家制度を概説した“スケッチ”、後半がそこからいくつかの法則を抽出した“モデル”になっている。
前半で取り上げられた国制は以下の通り。「伝統的理論に基づく私自身の簡明な分類」であるらしい。
- プリミティブな政府
- 古代の帝国
- ギリシャ都市国家
- 共和制ローマ
- ローマ帝国
- 東洋的専制主義
- 封建政府
- 初期近代国家
- 近代民族国家
- 近代的専制
- 全体主義政府
- 未来の国家
これに対して、クリックは「専制主義的」「共和主義的」「全体主義的」という3つの分類を後半部分で提起している。この3政体は、「多様性を秩序付けるという基本的な調整問題」へのアプローチによって分類できる。
- 専制主義的――多様な利害のうちから一つを選択し、権威によって強制する
- 共和主義的――利害の異なるものを参加させて、調停・競合的選択を行う
- 全体主義的――抗争のもはや起こりえない完全に新しい社会を提起して、革命を支持→強制させる
そして、11の問題に対してその3政体がどのように対処してきたかを検討する。
専制的 | 共和的 | 全体的 | |
住民の役割 | 受動的服従と社会的尊敬 | 自発的個人参加(の強制) | 大衆参加と強制的に表明される熱狂 |
公的教義 | 忠誠は宗教的義務で、政府は神の秩序の一部 | 功利的かつ世俗的基盤(市民社会) | イデオロギー |
典型的な社会構造 | 高度に階層化されたカーストないし階級構造 | 中間階級ないしブルジョアジー | (しばしば欺瞞に終わる民族的)平等主義 |
エリート集団 | 自己持続的かつ排他的集団 | 社会的特権を享受する、安定した政治的階級 | (理論的には)完全な社会的流動性にもとづく業績主義集団 |
典型的政治制度 | 宮廷ないし宮殿 | 議会 | 単一政党 |
経済 | 農業経済 | 資本主義経済、最終的には混合経済 | 戦争経済または計画経済 |
財産に関する理論 | 身分を明らかに示す標識 | 目に見える価値の標識 | (理論上)個人財産はない |
法に対する態度 | 慣習的かつ神授的 | 慣習および制定法 | 歴史法則 |
知識に対する態度 | 知識は力であり、用心深く守られるべきもの | 知識の断片化、道徳的事実と科学的事実の区別(相対主義) | イデオロギーによってすべての知識が一体化、強制的学習 |
情報普及に対する態度 | 風刺 | 調査 | 宣伝 |
政治への態度 | 陰謀 | 調停 | ブルジョア的偽善 |
個人的には全体主義への評価が興味深かったかな。全体主義は近代の産物?(そうじゃないっぽい) 革命は例外なく全体主義的になされる?(よくわからない……)
本書の興味は主に「近代」へフォーカスされている。その時間軸を「古代」「中世」へ移してみればまた違うかもしれない。