最近読んだ本:『人類と気候の10万年史』『モンゴル帝国と長いその後』『徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか』『顔氏家訓』

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11月はブログを書くのがだるかったので、積読ならぬ、積ブログしてしまった。一冊の本に集中せずに、その日の気分で興味に遭うものを読み散らかしているので、読了数も少ない。

『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』

福井県・水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。人類は誕生から20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の詳細な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめ直します。

これは面白かったので一気読みした。めっちゃおすすめ。

内容は読めばわかるので書かないけど、個人的な興味からちょっとだけ感想を書くと、気候変動の研究って経済学に通ずるところも多いなってところが面白かった。カオス(複雑系)なところがきっと同じなんだね。リフレとかが好きな人に欠けてるのはこういう観点だとも感じる。

あと、こういう研究にはお金出してあげてほしいなぁ、って思った(ぇ

『興亡の世界史 モンゴル帝国と長いその後』

興亡の世界史 モンゴル帝国と長いその後 (講談社学術文庫)

興亡の世界史 モンゴル帝国と長いその後 (講談社学術文庫)

やたら文章に肉感があるというか、抒情的というか、ちょっと酔っているというか、そういうところは少し気になったけど、ダイナミックな歴史観にはつい引き込まれるところがある。たとえば、教科書的な知識で中国史を見ると 宋 → 元 → 明 → 清 だから、ステップの視点から言えば 元 → 清 がダイレクト(?)につながってる……そんなイメージはあまり持てないよね。左翼・右翼っていう遊牧民的統治システムがあちこちに受け継がれてるっていう視点もなかったかも。まぁ、ちょっとモンゴルの肩を持ちすぎかなって気もするが。

続きはオスマンにいくかロマノフ朝に行くか悩んだけど、ちょっと毛色の違う歴史の方が面白そうなのでロマノフ朝のほうにした。

『徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか』

徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか (講談社現代新書)

徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか (講談社現代新書)

だいぶおすすめ。

内容は読めばいいので省くとして(← またかよ)、個人的には・本筋を無視していえば、いろんな勢力が法的権威のマウントの取り合いをやってるのが面白かったかな。それが高じて統一政権(専制?)になるんだなーみたいな感じある。西洋も教皇派と皇帝派みたいな争いをやってたけど。イスラム世界もスルタンが宗教と闘ってちゃんと屈服させちまえば、西欧に先んじて近代に進めたのかもしれんな。一方、中国には屈服させるべき巨大な宗教が成長しなかった。かの国の恐るべきは、そういう過程がないにもかかわらず経済的巨人になりうる点だけど(そして、革命が起こってまた初めから)。

あと、「さき」の解釈が時代によって過去と未来で変わっちゃうってところも面白かった。

本筋も十分面白いし、ちゃんと読めばいろいろ得るところがあると思う。

『顔氏家訓』

顔氏家訓 (講談社学術文庫)

顔氏家訓 (講談社学術文庫)

白文(返り点付き)は巻末にまとめて、じゃなくて、章・段ごとに付記してほしかったな(Kindle だと最後まで読まないと気が付かないな)。あと、抄訳だった。

自分は感受性がないのか、この『顔氏家訓』そのものに対してはとくに何も感じなかったが、あとがきにある著者・顔之推の数奇な運命と割と名門な顔氏というバックグラウンドを知ってからパラパラと読み返すと、結構味が出てくる。たとえば「栄達はほどほどにな」っていう訓示も、それ自体ではとくに面白みのあるものではないけど、彼のドラマティックな人生と重ね合わせれば「せやな、頑張ったな」ってなる。

まぁ、なんにせよ、『家訓』を残すべき相手があったのだから、顔之推はまだ幸せだよ。俺は書いても意味ないものね。