『銀の世界史』

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銀の世界史 (ちくま新書)

銀の世界史 (ちくま新書)

Amazon のレビューはそこそこだけど、個人的にはダメ本だった。少なくとも自分には合わなかった。

そもそも“銀”それ自体の話がほとんど出てこない。

銀の基本的な性質は? そこから導き出される用途は? 文化的な立ち位置は?

なぜ銀は通貨に用いられたのか? なぜ金に次ぐ地位を占めたのか?

なぜ金銀複位制・銀本位制から金本位制へ移ったのか?

そういうのに一切触れられず、ポトシ銀と日本銀が世界経済に与えたインパクトとプレゼンスを述べた後は、ひたすら近代世界史・世界経済を俯瞰する内容になっている*1。それもウォラーステインか誰かの受け売りみたいで、ちょっと気の利いた予備校の講師が世界史の講義でしゃべるような内容に過ぎない*2。経済に偏りすぎて、文化的な面を全く取り上げていないのも“世界史”の看板に見合っていないと思う。

要するに“銀”の“世界史”の本ではなく、“銀をキッカケに話を広げていく近代経済史”の本だな。前書きで東大の入試問題の話が出てきたときに嫌な予感がしたんだが……まぁ、読んで損はしなかったものの、とくに新しく身についたことはほとんどなかった。

Kindle でタイトルだけ見て買うとたまにあることなので仕方ない。

*1:それまでの世界史は各国史の集合とみなす立場もあるし、それ自体はそんなにわるくない

*2:新書でコンパクトにまとめているのはすごいと思う