『古典ギリシア語のしくみ』

執筆日時:

古典ギリシア語のしくみ (言葉のしくみ)

古典ギリシア語のしくみ (言葉のしくみ)

ギリシャ・ローマあたりの本をいろいろ読んでるうちに、「ギリシア語のちょっとしたところが分かると、便利そうなんだけどなぁ」と思い、購入。「別に本気で学びたいわけじゃないけれど、ちょっとぐらいは知っておきたい」みたいな都合のいい要求にバッチリ答えてくれる本で、すごく気に入った。

さすがに本の半分を過ぎたあたりからだんだん飽きてきて、コラムだけ読んであとは斜め読みしたけれど、それでも基本的な単語が読めるようになったのだけでもうれしい。

f:id:daruyanagi:20150522000219p:plain

たとえば、これは『ヒストリエ』の一節だけど、エウメネスがギリシア語でメモを取ってるのが分かる。古代のギリシア語は大文字しかなかった(わしはそれすら知らなかった!)が、「Σ(シグマ)」がアルファベットの「S」で、「Ρ(ロー)」が「R」、「Η(エータ)」が「エー」の音で、「Γ(ガンマ)」が「G」だっていうのさえわかれば、ΣΤΡΑТΗΓΟΣが“ストラテーゴス”と読める。英語で言ったら「Strategist(戦略家)」かな? ギリシャでは軍を率いる人(将軍)をそう呼んだ。

ちなみに、「ΧΑΡΗΣ」は敵将の「カレース(カレス)」(Χは「カイ」だからカキクケコやの)。「ΟΠΛΙΤΑΙ」は「ホプリタイ(重装歩兵の複数形)」になる(Πの書き方がちょっと知ってるのと違ってたから、パッと見わかんなかった)。「Ο(オミクロン)」の前には H 音が入ることがあるので最初は「ホ」、次は「Π(パイ)」の子音ナシなので「プ」、「Λ(ラムダ)」はラリルレロだから「リ」、あとは素直に読めばいいってわけ。文系人間のわしでも、アルファ・ベータ……ぐらいは知ってるから、落ち着いて脳内変換すれば読める。上の方は多分「ビュザンティオン(Βυζάντιον)」やな。ちなみに「Ο(オミクロン)」はオ・ミクロン(小さいオ)の意。でかいのは「オ・メガ」つまり「Ω(オメガ)」で、読むときは「オー」って延ばすんだ。へー!(←知らなかったのかよ!!)

ギリシア文学の本を読むと、「ソクラテス」だったり「ソクラテース」だったり、なんで統一してくれないんだ! とうんざりだったけど、この本読んでからどっちの気持ちもほんのり分かるようになり、いろいろ許せるようになった。あと吸収できたのは、語順は割と適当でいいとか、活用が割と大変っぽいとか、Σの小文字は文中だとσだけど文末だけςになるとか、まぁ、そういうことぐらいだけど、それだけでも何も知らないよりは全然違う。大変ありがたい本だと思った。

ちなみに、古代は大文字しかなかったと言ったが、この本では基本的に小文字が使われている。最初はこれを見て「なんでや! 古代には大文字しかないんだったら、この本も大文字だけにしてくれば覚える字が少なくて済むのに!」と思ったんだけど、小文字だとアクセント記号とかいろいろ盛れるんだね。おかげでどうやって読めばいいのかってのが割と簡単にわかる。本書では詩歌がどのように発音されていたのかも解説されていて、ちょっとだけだけどギリシア語のリズムにも触れることができた。それも収穫かな。

ぶっちゃけ、これ一冊をちゃんと読みこなしてもギリシア語の文が読めるようになるとは思えんけど、「だいたいこんな感じ」ってのが分かれば十分な場合には結構使える。もうちょっと専門的な用語で説明してもいい気はするけど(ときにはそっちの方が簡明だ)、まぁ、これはこれでアリって感じやね。ラテン語とロシア語(キリル文字読めたらすごくない?)のも買ってみようかなと思う。

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)