『陽炎型駆逐艦』
執筆日時:
- 作者: 重本俊一,ほか
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 2015/01/09
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
Kindle で買ったのだけど、資料用ならば紙よりも検索のできる Kindle 本のほうが圧倒的にいいな(前からわかってたことではあるけど)。すでに手持ちのも Kindle で買いなおしたいぐらいだけど、さすがにそこまでの財力はないので、Amazon で紙書籍を購入してたら Kindle 本が追加で格安で買えるとか、そういうサービスがあればなーと思う。
――自炊? ああいうのは暇な人がやればいいと思う(違
本書は『丸』に載ってたのを再構成したのかな? 乗組員の戦記集と解説で構成されている。個人的には『日本駆逐艦造船論』が参考になった。この稿は実際に陽炎型駆逐艦の設計を手掛けた牧野元海軍技術大佐によるもので、峯風型以降の日本の駆逐艦造船のあり方が論じられている(氏が戦後に設計に携わった自衛隊の護衛艦についても記述あり)。
それによると、「日本造艦技術の歴史は、拡大と模倣と無理とがだいぶ部分を占めている」という。なんだかとてもわかる気がする。まず“模倣”から入るのは仕方がないとして、それに日本流の“無理”を詰め込み、それをでっかくスケーリングしていくって感じ。あの「大和」型戦艦ですらも、割かし評判の良かった重巡洋艦の拡大版に過ぎないというひともいる。無論、個々の機能については革新的なところが少なくないのだけれど、全体としてみれば過去の延長・発展でしかない。未来の海戦のあり方をイメージし、それをもとに新しい絵を描くという姿勢には乏しかったのではないだろうか。空母の運用なんかでは先が見えていたのだから、それが主流になれればよかったのだけど。
陽炎型駆逐艦は、まさしく、拡大と模倣と無理で発展してきた日本駆逐艦の集大成的な存在だった。氏は平凡と謙遜するけれど、バランスが取れている。その理由としては、
- 軍縮条約の失効が見えていたので、船体サイズの制限をとることができた(特型と同サイズ)
- 特型では第四艦隊事件・友鶴事件で復元力不足が露呈したほか、前級の朝潮型ではタービン周りの不具合が見つかる(臨機調事件)など、竣工後の大規模手直しが続いた
- すでに大きな失敗をやりつくし、その教訓が取り入れられた
- 比較的スペックに対する要求が緩く、問題が発生しないことが優先された
という事情があったみたい。それでも、本来の運用とは異なる使われ方をしたせいもあって(リングでの殴り合いするために体を鍛えたのに、実際にやらされたのは雪山登山だったときのボクサーの気持ちを30文字以内で説明せよ)、生き残ったのは『雪風』だけだった。
あと、巻末に全駆逐艦の簡単な艦歴があって便利。なんで陽炎型だけに絞らなかったのかは謎だけど。ページ水増しか。