価値を生む“双頭の蛇”
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米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイが、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の株式を新たに取得したことが15日分かった。小売り大手ウォルマート・ストアーズやIT(情報技術)のIBM株も買い増した。欧州不安がくすぶる中、バフェット氏の「米国依存」が鮮明になっている。
まぁ、これでGMの株が上がったりするんだろう。
バフェット氏が買う → みんな買う → バフェット氏売り抜ける
— だるやなぎさん (@daruyanagi) 5月 15, 2012
そうやって負け知らずに儲ける*1ので、バフェット氏は「投資の神様」と呼ばれる。この評判(≒権威)が、次の儲けにつながる。
似たような構図は、日本にもある。
勝間さんが「成功する方法」について本を書く → みんな買う → 勝間さんが成功する
— だるやなぎさん (@daruyanagi) 5月 15, 2012
だから、勝間さんはより多くのファンを獲得できる。きっと、何かのきっかけでこの信仰(≒権威)が崩れない限り、次の本も成功するのだろう。あまりこの手の本は好きではないが、そう考えると少し興味が出てくる。
こうやって儲けることは別に悪いことじゃない。おそらく、本人に悪意はない。ただ、冷静に考えればちょっとおかしい「循環」ができあがっていて、それ自体が価値を生み出している。交換されることで貨幣たりえ、貨幣であるがゆえに交換される、貨幣=交換の循環関係にも似ている。この関係は、世界の富の増大に一役買っている。
関連して、こんなことも思い出した。
こういうのもあったな / Wikipedia に間違いが記載される → 権威あるメディアにこっそり引用される → それが Wikipedia の出典に → 間違いが正しくなる it.slashdot.jp/story/09/02/13…
— だるやなぎさん (@daruyanagi) 5月 15, 2012
ドイツの経済技術省の大臣に新しく就任した「von und zu Guttenberg」氏は由緒ある名門の家系の出身で、正式な名前は「Karl Theodor Maria Nikolaus Johann Jacob Philipp Franz Joseph Sylvester Freiherr von und zu Guttenberg」というそうだ。氏が大臣に就任するという話が出始めたころ、Wikipedia の同氏に関するエントリが編集され、名前に「Wilhelm」が付け足され「Karl Theodor Maria Nikolaus Johann Jacob Philipp Wilhelm Franz Joseph Sylvester Freiherr von und zu Guttenberg」に変更された。
大手新聞やインターネットサイト、またTV番組などドイツ内外のメディアはこの Wikipedia のエントリを参照し「Wilhelm」入りの間違った名前を使い氏に関する報道を行ったそうだが、そうこうしているうちに Wikipedia のエントリは再度編集され、名前に「Wilhelm」が含まれるという証拠を求めると共に、元の正しい名前に戻された。この時点で既に多くのメディアが「Wilhelm」入りの名前で記事を報じていたため、ソースを提示するのは容易く、Wikipedia が誤った事実を掲載し「信頼できる情報源」がこれを報じ、それをソースとして誤った事実を「情報源のある事実」として Wikipedia に掲載できるという循環が生まれてしまったとのこと。
メディアとWikipediaが互いに参照しあって、新しい「(偽りの)事実」が生まれた。その様は、まるで互いに尻尾を食い合う“双頭の蛇”のようにも見える。
*1:不敗ではないようだけど