京都・鹿ケ谷の泉屋博古館で青銅器のフルコースしてきた

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最近、中国の貨幣の本などを読んでいるのですが、それを知った友人が京都・鹿ケ谷の泉屋博古館を案内してくれました。

blog.daruyanagi.jp

この前のお墓参りのついでですね(笑

www.sen-oku.or.jp

僕は存在自体を知らなかったのですが(京都に住んでたくせに!)、とくに青銅器のコレクションは充実しているのだそう。残念ながら貨幣の展示はしていなかったのですが、これはこれで面白そう。

財団法人泉屋博古館は、住友家の美術コレクション、特に中国古代青銅器を保存展示するための機関として昭和35年(1960)に設立された。名前の由来は、江戸時代の住友家の屋号「泉屋」と、中国の宋時代に皇帝の命により編集された青銅器図録「博古図録」からとっている。この名称がいつから使われたかは不明だが、旧銅器庫の正面上に西園寺公望揮毫の「泉屋博古」額が架けられており、少なくとも旧銅器庫が竣工した昭和初期には使われていたとわかる。平成14年(2002)には、別子銅山開坑300年記念事業の一環として、東京都港区六本木の泉ガーデン(泉ガーデンタワーなどからなる再開発地区)内に分館が開館した。

収蔵品は、住友家当主15代目住友吉左衞門(1864-1926)が収集した中国古代青銅器類と、その長男の住友寛一(1896-1956)が収集した中国明清代の絵画を中心とするコレクションや、16代目当主住友吉左衞門(1909-1993)が蒐集した作品、また15代目以前から住友家に伝来したものが中心である。所蔵総数は約3100点で、中国の殷(商)、周時代を中心とした青銅器、日本・中国の銅鏡、仏像、明・清時代を中心とした中国書画などが名高い。

要するに別子銅山で儲けたおカネで青銅器をコレクションしてやったみたいなノリですね。そういうのめっちゃいいと思うし、そういうおカネの使い方ができるならお金持ちになるのもアリだなぁと思います(なれないんだけど!)。

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行くまでは、ちょっといい感じのモノが数点飾っているだけなんじゃないかと想像していたのですが、実際に見てみるとかなり圧巻でした。やはり本で読むのと、実物を見るのとはえらい違いですね。ボランティアのおっちゃんが丁寧に解説してくれたのもよかったです。

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とくに素晴らしかったのは、第一展示室の12点ですね。青銅のチェーンが鋳造で作られてるとか、技術力が高すぎて意味わかりませんね。鋳造って鋳型(“範”と言います)に溶かした合金を流し込む、あの方法ですよ。まず、チェーンを作りたいって思い立つのがスゴいじゃないですか。たいした道具もないのに。紙のように薄い器には破れもあったのですが、それが逆に当時の技術力の高さを示しています。きっとデキた当初は破れずに、金色に輝いていたんでしょうね(青銅は本来金ぴかで、年を経るとああやって緑色っぽくなります)。

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第二展示室はさまざまなタイプの器ですね。古典を読んでも鼎や觴、爵なんかがお馴染みなような気がしますが、今回は取っ手の付いた液体入れである“卣(ユウ)”や、蓋つきの四角い器“豆”(朝食のバイキングでスクランブルエッグ入れてるようなやつです)についても学べました。器のタイプによっては、身分に応じて持っていい数が決まっていたらしく、単に道具としてではなく、威信財としての役割もあったんですね。

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第三展示室は、文様についてです。殷の時代に流行った“饕餮文(とうてつもん)”がとくに有名ですが、実際に目にしたのは初めてでした。これって別に古の大妖魔“饕餮”(十二国記にでてくるやつですね)を象ったからそういう名前というわけではなく、単にそういう名前がついているだけらしいですね(なので、“獣面文”と呼ぶのが正しいのかもしれません)。誤解していました。

こういうのはあまり詳しくないのでテキトーですが、龍はもともと蛇やトカゲからヒントを得た動物でしょう。なので、きっと南方系の部族がトーテムにし、好んで意匠に用いたのだと思います。楚の荘王が自分を伏龍になぞらえていた故事(雲雨を得ればすでに地中にあらずだかなんだか、そういう話です)をみても、水と木と雲・霧・雨の国にピッタリな衣装だと思いませんか。衛の王様だかが龍が好きで好きでたまらなかったのに、実際見たらビビッて腰抜かしたなんて故事もありましたけど、北の方の国はきっとそういうのを最初から南からきた仮想の動物と捉えていたのではないでしょうか。

一方、鳥は西方または東方の匂いがします(なんとなく南北っていうイメージではないですね)。卵生伝説は東方のイメージですし、西周で鳳凰文が好まれたのは西の方で鳥をトーテムとする部族がいたからのような気がします。神話のイメージがちょっと膨らんでくる感じ。

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第4資料室は、国宝の銅鏡を含むさまざまな作品が展示されていました。僕はかねがね三角縁神獣鏡みたいなやつの表(鏡になっている方!!)を見たいなーと思っていたのですが、結構ピカピカで、ちゃんと顔が映るんだなー(汚いおっさんが映っていました)。

鏡は時代を下っても作り続けられたようですが、近い時代になるとモチーフも神仙っぽい内容になってきたリ、時代の移り変わりが感じられて面白いです。目がそんなによくないので細かいところまで見るのに難儀しましたが、これてよかったですね。パンフレットもバッチリ買っちゃいました。大判フルカラーで、たまには見返そうかと思います。ってか、貨幣の展示のときにまたきたい。別子銅山もちょっと覗いてみたいなって思いました。