相互贈与の天秤
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相互贈与においては、贈与が“キッチリ”清算されてはならない。清算された相互贈与は、そこで関係が止まってしまう。再びその歯車を回すためには、また最初の贈与――“命がけの跳躍”とでもいうべき最初の贈与――からやり直さなければならなくなる。
贈与の価値は、軽量化されてはならない。贈与の価値は、与えるものと与えられるものの間で、曖昧に、なんとなく、だいたいで把握されていなければならない。計ってはならないし、計る必要もない。
相互贈与は互いに与える贈与の価値が釣り合っていなければならない。しかし、その天秤はけっして静止させてはならない。
天秤の針が左右いずれにも揺れるかぎり、破局が訪れることはない。