大上造ってどんだけ偉いねん
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盛り上がっているところ大変申し訳ないのだが、イマイチ何がすごいのかさっぱりわからんので少し調べてみた。
秦朝二十級軍功爵位制
秦代と漢代では爵位制度が異なるようだが、その違いは資料がないためよくわかっていないのだそうな。なので、漢代の爵位を並べてみる。
| 爵位 | 田 | 宅 | ||
| 20 | 官爵 | 徹侯(勇侯、列侯) | 百五宅 | |
| 18 | 官爵 | 大庶長 | 九十五頃 | 九十五宅 |
| 19 | 官爵 | 関内侯 | 九十頃 | 九十宅 |
| 17 | 官爵 | 駟車庶長 | 八十八頃 | 八十八宅 |
| 16 | 官爵 | 大上造(大良造) | 八十六頃 | 八十六宅 |
| 15 | 官爵 | 少上造(少良造) | 八十四頃 | 八十四宅 |
| 14 | 官爵 | 右更 | 八十二頃 | 八十二宅 |
| 13 | 官爵 | 中更 | 八十頃 | 八十宅 |
| 12 | 官爵 | 左更 | 七十八頃 | 七十八宅 |
| 11 | 官爵 | 右庶長 | 七十六頃 | 七十六宅 |
| 10 | 官爵 | 左庶長 | 七十四頃 | 七十四宅 |
| 9 | 官爵 | 五大夫 | 十五頃 | 十五宅 |
| 8 | 民爵 | 公乘 | 十頃 | 十宅 |
| 7 | 民爵 | 公大夫 | 九頃 | 九宅 |
| 6 | 民爵 | 官大夫 | 七頃 | 七宅 |
| 5 | 民爵 | 大夫 | 五頃 | 五宅 |
| 4 | 民爵 | 不更 | 四頃 | 四宅 |
| 3 | 民爵 | 簪裊 | 三頃 | 三宅 |
| 2 | 民爵 | 上造 | 二頃 | 二宅 |
| 1 | 民爵 | 公士 | 一頃半 | 一半宅 |
| 公卒 | 一頃 | 一宅 | ||
| 士伍 | 一頃 | 一宅 | ||
| 庶人 | 一頃 | 一宅 | ||
| 司寇 | 五十畝 | 半宅 | ||
| 隠官 | 五十畝 | 半宅 |
楊単和がもらった“大上造”は上から5番目なのだけど、んー、やっぱりちょっとよくわかんない。田圃は400ヘクタール(!)もらえ、家は86宅……宅は30歩(漢代で1歩=1.38m)四方だというから……1713.96m^2(500坪ぐらい)になるのかな。割とすごいな。
なお、五大夫以上は、官吏になっていないともらえない(官爵)。
爵位外の公卒、士伍、庶人、司寇、隠官はよくわからない部分も多いけれど、士伍がまだ爵位をもらっていないフツーのヒト、公卒が不更~上造の子息だけど爵位はまだないヒト(士伍より少しランクが上として扱われる)、庶人は過去に罪があったり、奴婢であったけれど今は許されてフツーの爵位がないヒト(士伍よりは下のランク)という感じのようだ。ちなみに司寇は刑罰を受けて労働に従事している人、隠官は過去に肉刑(肉体に損傷を与える刑罰)を受けて罪をあがなった人を指すみたい。
爵位もらって何がうれしいの?
まず、爵位によってもらえる田んぼの大きさや、住んでいい家の大きさが決まる。『キングダム』の“信”が出世してちょっと家がデカくなっているのはそういうことなのかな。
次に、与えられる刑罰が異なる。基本的に2級の「上造」をゲットしていれば、それを返納することで肉刑が回避できる。肉刑というのは肉体に傷を加える罰で(現代では死刑を除き禁止されている)、以下のようなものがあった。
| 黥 | 額・頬骨など顔面に入墨する | 楚漢戦争で活躍した「黥布」が受けたという刑 |
| 劓 | 鼻を削ぐ | |
| 斬趾 | 足首を切断する | 兵法家・孫臏が受けた刑? |
| 鋈足 | 足枷をする(もしくは足斬り) | |
| 耐 | 髭をそる | |
| 完 | なし |
それに加えて労務刑があり、一般的に肉刑と組み合わせて「黥城旦(刺青を入れて万里の長城を作らされる、死罪の次にキツい)」とか「耐司寇(髭をそって警察任務を手伝わされる)」といった感じで課されたようだ。
| 刑の重さ | 労役刑 | 性別 | 労役の内容 |
| 重 | 城旦 | 男 | 城壁の見張りと修築 |
| ↑ | 舂 | 女 | 官の穀物を舂いて籾殻を取る |
| ↑ | 鬼薪 | 男 | 祖廟、宗廟の祭祀に用いる薪を集める |
| ↑ | 白粲 | 女 | 白米、祭祀に供する穀物をより分ける |
| ↓ | 隷臣 | 男 | 官府の雑役 |
| ↓ | 隷妾 | 女 | |
| ↓ | 司寇 | 男 | 捕盗の任もしくは辺防にあたる |
| 軽 | 侯 | 男 | 敵情偵察、斥候 |
もうひとつ、爵位を得ることの特典は、兵役が短くなること。
たとえば爵位のない場合、17歳で兵役に就き、老齢を理由にそれが免除される(免老)のは60歳になってからだった。これが1級の「公士」をゲットすれば56歳に短縮。ちょっとだけ早く引退生活をエンジョイできる。

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