心の哲学
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(心について)分析哲学者の間でポピュラーな立場は、大きく分けて三つある。行動主義、同一主義、機能主義である。
行動主義
行動主義は、唯物論・機械論の一形態で、心(mind)の独在を認めていない。彼らにとって“自由意志は錯覚であり、行動は遺伝と環境の両因子の組み合わせによって決定されていく”。
分析哲学者の中には、行動主義者と呼ばれる者や、自称する者がいる。
ルドルフ・カルナップやカール・ヘンペルといった所謂論理実証主義者たちが称えた“論理的行動主義”では、心理的状態の意味付けは、実行された顕在的行動からなる検証条件である。
ウィラード・ヴァン・オーマン・クワインは、スキナーの考えに影響され、言語の研究の中で行動主義を利用した。
ギルバート・ライルは、哲学的行動主義に傾倒し、自著『心の概念』の中で哲学的行動主義を概説した。そして、ライルは、二元論の例証では、日常言語の使用の誤解による“カテゴリーミステイク”が頻繁に生じていると考えた。
ダニエル・デネットもまた、自身の論文「メッセージは;媒介などない」(The Message is: There is no Medium, Dennett, 1993年)の中で、自身を一種の行動主義者であると認めている。
- ギルバート・ライル(1900-1976)『心の概念』
ギルバート・ライル(Gilbert Ryle、1900年8月19日 - 1976年10月6日)はイギリスの哲学者。ウィトゲンシュタインの言語観に想を得たイギリスのいわゆる日常言語学派の代表的人物とされている。心身二元論を批判する時に用いた「機械の中の幽霊(Ghost in the machine)」、「機械の中の幽霊のドグマ」という表現でもよく知られている。自身の思想の一部を「行動主義」と表現した
主著『心の概念』で、デカルト的心身二元論を批判。日常言語学派(日常言語学派 - Wikipedia ⇔ 理想言語学派、日常言語を不完全とみなし形而上学における分析に耐えないとする立場)。
人間本性が小さな機械だとすれば、人間の特性である知能や自発性が説明がつかないから、この小さな機械の中に幽霊がいるとしなくてはならなくなる
同一主義
同一説(どういつせつ、英: Identity theory)は、心身問題に関する立場の一つで、心の状態やプロセスというのは、脳の状態やプロセスそのもののことだ、という考え方のこと(英語圏では一般に "Mind is Brain" といった形で、be動詞を強調することによって同一説の持つ考えを提示する)。心脳同一説とも呼ばれる。心の哲学という分野において、物理主義(物的一元論)の一種として、二元論一般と対立する文脈で語られる。
- U.T.プレイス(1924-2000)『意識は脳の過程か』
- J.J.C.スマート(1920-)『感覚と脳の過程』
機能主義
心の哲学の分野における機能主義(きのうしゅぎ、Functionalism)とは、心的な状態というのは、その状態の持つ機能的役割によって定義される、という立場。 すなわち、「痛み」を感じている人間の脳の機能を忠実に再現しさえすれば、それを構成する材料が神経細胞ではなく、シリコンチップや、バネと歯車で構成された機械などであっても、それを「痛み」というのだ、という考え方。行動主義や同一説の問題点を踏まえた上で、それらのあとに続く考え方として、1960年代に登場した。
- ヒラリー・パトナム - Wikipedia(1926-)『心理的述語』(1973)
- デイヴィド・ルイス - Wikipedia(1941-2001)『心理的および理論的同定』(1972)
- デイヴィド・アームストロング - Wikipedia(1926-)『心の因果論』(1977)
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