TPP についてほんの少し。
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毎日新聞は16、17両日、全国世論調査を実施した。安倍晋三首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を正式表明したことについて「支持する」との回答は63%で、「支持しない」の27%を大きく上回った。
マクロな経済(TPP 参加国すべての厚生)に関していえば、TPP に参加しない手はないと思う。つまり、“おカネ”の世界ではもう議論の決着がついている。
ただ、問題は“政治”。なにが正しいかではなく、どれだけ多くの人が納得できるかの問題。
TPP に参加すれば、競争力に欠ける特定の分野が不利になる。たとえば、農業はそうなることが懸念されているし、実際、ちょっと厳しいのではないかと思う。農業は基礎産業だ。いかに自動車だの IT だのの産業が発達しても、農業が壊滅したら生きることができない。
ただ、そうなれば輸入すればいい話で。TPP に参加すれば、政治的な理由で農作物の輸出を止めたり、自国のみを優遇することは許されなくなる。つまり、アイツはムカつくから穀物を輸出してやらねえ、とか、自分は安く、アイツだけ高く売ってやれ、というのは基本的にできなくなる。ならば、安全保障的な意味で農業自給率を考える必要は、実はあまりないのではないかな。農業・医療の安全基準を心配する向きもあるけれど、ちゃんと等級をつけられれば(たぶんそういう制度はできるだろう)、安心なモノがほしければ高く、安さを何より優先したい場合は安く手に入れられて結構な話だ。
となれば、最終的には補償の問題になるのだろう。安全保障や安全の面で農業の保護と TPP 反対を訴える人たちの心配も、結局のところはココにあるのだと思う。
正直、これは難しいな。経営環境の変化で倒産する企業はごまんとあるのに、TPP でつぶれる産業にのみ補助金を投入するのは果たして公平と言えるだろうか。とはいえ、まったく払わないのを正義とできるだろうか。では、中間をとって一定の基準にしたがって補償するとして、その基準は一体どこに置くべきだろうか。
まぁ、でも、過半数の支持が得られているのはちょっと安心。最初に言ったけど、こと“おカネ”に関する限り、参加しない手はないので。
ただ、これは気になる。
TPP交渉参加の支持は30代以上の世代で6割前後に及び、不支持を上回った。一方、20代では不支持が50%を占め、支持の47%と逆転。市場開放で雇用機会が奪われることに警戒感もうかがえる。地域別にみると、北海道の不支持は53%に上り、支持40%より高い。
20代で不支持が50%を占める。これはどういうことなのだろう。
一般的に、自由化は先占的・歴史的・権威的な既存の仕組みを破壊する。だから、新しく社会に参入する若者にとっては結構な話じゃないか、と思う。なのに、不支持が多い。
そこでひとつ思い当たるのは、“世代的被害意識”。つまり、自由化します、けれど国内の閉塞的な環境はそのまま、激化した競争のシワ寄せは弱者に行きます……すなわち、若者に。そう感じている人が多いのかもしれない*1。企業が潤って、正社員の給料が増えても、若い派遣社員の給料にまで反映されるのだろうか。
もしそうだったら不幸なことだと思う。不幸をみんなで分かち合い、そのあとの果実をともに味わうにはどうすればいいんだろうな。僕としては、国内についても構造改革を進めるべきではないかと思う。それが万が一自分にとって悪い結果になろうとも。
*1:もしかしたら経済学的に不勉強なだけなのかもしれないが