ボワギルベール(Pierre le Pesant de Boisguilbert, 1646-1714)
執筆日時:
生涯
1646年12月17日、ルーアンの新興貴族の家に生まれる。当地のイエズス会の学院で学んだ後、パリに出て法律を学び、弁護士の資格を得る。当初はギリシャ文学の翻訳や歴史小説を発表し、文学によって身を立てようと図るが、志ならず、1667年に郷里へ帰る。
1768年にモンティヴィリエ子爵領の判事職を購入、次いで1690年にルーアンの初審裁判所司法総監の職を購入。一時的な離職はあったものの、生涯その職を全うする。1714年10月10日没。
著作
M. de S.というペンネームで『フランス詳論』を出版。ポスト=コルベルティズム以降の経済危機の時代に、農民の惨状を代弁。コルベルティズムへの批判を行う。
1707年には、それ間の草稿をまとめた『フランス弁論』を出版。さらに、『穀物の性質、耕作、取引および利益に関する試論』、『富、貨幣および貢租の性質に関する論考』を加えた『現世治下のフランス詳論』を匿名で出版するも、ヴァーボンの『王国10分の1税案』とともに発禁処分となり、オーヴェルニュへ6か月追放の刑に処せられた。
- 『現世治下のフランス詳論』(Le détail de la France, sous le règne présent)
- 『フランス弁論』(Factum de France)
理論
商品を二重の形態に分析すること、使用価値を現実的労働または合目的的な生産活動に、交換価値を労働時間または同等な社会的労働に分析することは、イギリスではウィリアム・ペティに、フランスではボワギルベールに始まる。
ボワギルベールの方は、個々人の労働時間が特殊な諸産業部門に配分される正しい比率によって「真実価値」を規定し、そして自由競争をこの正しい比率を作り出す社会的課程であると述べて、事実上、商品の交換価値を労働時間に分解している。
- 小麦価格⇒労賃⇒購買価格(⇒交換価値): 生産費価値説
- レッセ・フェール…「自然の働き」による調和
- 穀物輸出入の自由化による、穀物価格の安定
- 豊かさへの衝動の「相互効用」で成り立つ社会というビジョン
- ただし、「商業の精神」には懐疑的
- 消費=所得、消費主導論(消費→生産→所得→消費→…)
- 農業以外は「無償で土地の果実の恩義を受け取るのは最初だけ」、地主も"仲介役"にすぎない
- 貨幣の「唯一の機能」かつ「本来の機能」は流通=交換手段のみ
- 貨幣は消費のしもべ…貨幣が足りなければ為替・手形が代替しうる
- 貨幣=商品説。価値保存機能は「貨幣の本質からの転倒」、財の釣り合いを破壊。
- 「貨幣崇拝は諸悪の根源」
- 自然であれば、比例価格=生産費を補てんする価格になる
- 需給ギャップは拡大されて価格のギャップへ反映される
- 「予想作用」…価格の安定性、不均衡の拡大要因にも(予想のバブル)
- 穀物価格を基準とした、諸財間の比例的な均衡価格を想定
- 工匠たちの賃金の下方硬直性 → 農業者の収益減少と生産費上昇
- 過少消費を問題にする…恣意的な税制を批判
- ケネーに先駆けて、農業生産は前払いに依存することを指摘
- 生産の非内在的条件(価格、消費)を重視
HERMES-IR : Research & Education Resources: 18世紀フランス経済学の展開 : ボワギルベール, カンティロン, ケネーを中心に