Windows の[スタート]に関する独断と偏見に基づく簡単な歴史
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Windows 95(Windows 4.0、1995~2001)
Windows に[スタート]ボタンが追加されたのは、Windows 95 からであるらしい。懐かしいなぁ……このときはまだ中学生だか高校生だかで、自分のパソコンなんてもってなかった。
当時は Mac ユーザーに「OSを終了するのにスタートボタンを押さなきゃならないだなんてwww」などと言われていたよね。これは結局、Windows Vista になるまで続いた*1。
初期のWindows95/NT4のスタートメニューは、ただのポップアップメニューでした。オーナードローのメニューで「Windows95」の文字やアイコンを描画しているだけです。
http://homepage1.nifty.com/kazubon/progdoc/tclock/taskbarhistory.html
当初は非常にシンプルな構造をしていたが、Internet Explorer 4.0 のシェル統合(OSR 2.5)により内部構造がだいぶ変わっている*2。
BaseBar +- ReBarWindow32 +- SysPager +- ToolbarWindow32
IE 4の新しいシェルでは、スタートメニューはメニューではなく、BaseBar というクラス名のウィンドウになりました。「Windows 95」や「Windows NT Workstation」などのロゴは、BaseBar の上、ReBarWindow32 の左に描かれます。
http://homepage1.nifty.com/kazubon/progdoc/tclock/taskbarhistory.html
これにより Windows はブラウザーと密接に統合された“インターネットOS”への進化を遂げたが、動作速度の低下とリソース不足、コアまで攻撃が貫通する甘いセキュリティ、ブラウザーをバンドルしたことに対する独占禁止法違反と戦わねばならなくなった。これはまた別の話。
Windows 98(Windows 4.1、1998~2006)
Windows 95 とあまり違いはない。Windows Update が一番上に鎮座しているのと、ログオフのためのメニュー項目が追加されているのが目につくぐらい。[スタート]メニューには直接関係がないが、[クイック起動]ツールバーが搭載されたのもこのバージョンなのか。
Windows 95と一線を画している特徴の一つとして、スタートメニューもドラッグアンドドロップの対象となった点が挙げられる。また日本語版では、システムフォントとして全角のひらがなとカタカナの文字の横幅が小さくなった「MS UI ゴシック」が新たに導入されたことに伴い、ウインドウのメニューバーなどに使用されていた半角カナが全角カナに統一された。
当時としてはメニュー左側の帯にグラデーションが施されているのがカッコよく、オーナードローによってこれを実現する TIPS が流行ったりしていた。
内部構造は Windows 95+IE 4 時代を踏襲。
BaseBar +- MenuSite +- SysPager | +- ToolbarWindow32 +- ToolbarWindow32
Windows 98(IE 5)のスタートメニューは、IE 4のスタートメニューと同じく、クラス名が BaseBar のウィンドウです。ただし、子ウィンドウの ReBarWindow32 が MenuSite に置き換わっています。Windows XPクラシックまで、この構成は同じです。
http://homepage1.nifty.com/kazubon/progdoc/tclock/taskbarhistory.html
Windows Millennium Edition(Windows 4.9、2000~2006)
Windows 2000(Windows 5.0、2000~2010)
Windows 2000 では、使用頻度の低い項目を非表示にするお節介な機能が追加された。また、[ログオフ]メニューが消えたけれど、これは設定画面から復活させることができる。
Windows XP(Windows 5.1、2001~)
スタートメニュー史上における大きな転換点の一つ。
- “使用頻度の高いものをアクセスしやすいところに配置する”
- スタートメニュー≒ポップアップアップメニューという常識を破壊
できる機能をユーザーインターフェイスとして提供するのではなく、やってほしい機能・使うであろう機能をユーザーインターフェイスとして提供する方向へ舵を切った。
ところが“Luna”インターフェイスがキモすぎて、クラシック[スタート]メニューへ戻す人が続出(今でもそれが粋だと勘違いしてこだわる人多し)。こちらのほうの内部構造は Windows 2000 と同じ。
慣れ親しんだ“クラシック”テーマへ戻すことに留めて、スタートメニューそのものは新しいものを使うのが賢い。
一方、その新しいスタートメニューだが、内部構造ががらりと変わっている。
DV2ControlHost スタートメニュー |- Desktop User Pane メニュー上部 | +- Static |- DesktopSFTBarHost メニュー左部 | +- SysListView32 | +- SysListView32 |- Desktop More Programs Pane 「すべてのプログラム」の部分 | +- Button |- DesktopSFTBarHost メニュー右部 | +- SysListView32 | +- SysListView32 +- DesktopLogoffPane メニュー下部 +- ToolbarWindow32
Windows XPの新しいスタートメニューは、DV2ControlHost というクラス名のウィンドウです。このスタートメニューは、5つの子ウィンドウを持ちます。
http://homepage1.nifty.com/kazubon/progdoc/tclock/taskbarhistory.html
かなり複雑になった。個人的には“スタートウィンドウ”と呼びたい。
Windows Vista(Windows 6.0、2006~2012)
なんといっても検索できるようになったのが偉い。
これだけでも Windows XP から Windows Vista へアップグレードする価値があるが、当時のスペックでは検索のためのインデックスを作る処理がちょっと重かった。あと、マウスオペレーションしかできない“自称”上級者が盛んに中傷したこともあり、いまだに利便性が十分訴求されていない。
また、“すべてのプログラム”がメニューからツリーになった。メニューが横方向にグダグダと伸びることがなくなり、マウスの移動距離がかなり短縮されたほか、ふとしたミス操作で長々と開いたメニューが消えるという事故も減った。とはいえ、昔の操作を懐かしむ人は一定数いるようだが。
一方、“クラシック”テーマのスタートメニューは無残に。“Aero”は“Luna”よりも断然カッコいいため、“クラシック”テーマに戻す人はこれを機に激減した。
[スタート]ボタンからとうとう「スタート」という文字が消えたのもこのバージョンから。“クラシック”テーマを復活させた場合にだけ[スタート]という文字が現れるが、これは“回顧厨”への配慮だ。
Windows 7 (Windows 6.1、2009~)
基本的な部分は Windows Vista を踏襲。ユーザーアイコンがメニューから飛び出さなくなったり、シャットダウンボタンのデザインが変わったり、“最近利用したファイル”が消えたりした程度。
Windows 95 から続いてきたクラッシックなポップアップタイプのスタートメニューは削除された。
Windows 8(Windows 6.2、2012~)
[スタート]ボタンに死が与えられた。[Windows]キーがないキーボードを使っている人は、キーボードを買い換えよう。
デザインのほうは、スタートメニュー → スタートウィンドウ と進化した流れを踏襲して、とうとう全画面を占拠する“スタートスクリーン”へ。
高解像度モニターが一般的になってきたのに、左下で細々とスタートウィンドウを小さなイジるのはナンセンス、というわけなのだろう。それにしても、スタートスクリーンを新しいタッチファースト・アプリケーションのプラットフォームにしてしまうとは大胆だ(コケなけりゃいいんだけど)。
一方、Windows ガジェットは役目を終えて殺された。Windows ガジェットは、もともとシングルタスクで涙目だった旧 Mac で苦肉の策として導入されたシステムを「カッコいい」と勘違いして導入したものだけど、邪魔になることこそあれ、便利なものはそれほど多くはなかった。
検索については、過去に言及した(Metro デスクトップはでっかいスタートメニュー。死んだのはスタートメニューではなくマウス。 - だるろぐ)。
こうやって並べてみると、Windows 8 の“スタートスクリーン”には(マルクス的なw)必然性があるようにも思える*3。