哲学の分類

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カントによると、古代ギリシア哲学は三つの分野に分けられている(そして、彼によればその分類は極めて妥当なものだという)。

論理学(Logica)には、「経験」がまったく含まれない。あくまでも思考一般の普遍的な規則のみを考察する「形式」的な哲学だ。

一方、残り二つの哲学は特定の対象に関わり、その対象が従う法則が検討される。自然哲学(Philosophia Physice)では自然の法則が、倫理学(Ethica)では自由の法則が考察される。

論理学と違い、自然哲学と倫理学には「経験」と「形式」の両方が含まれ得る。そこから「経験」にもとづく部分を取り除けば、アプリオリな原理だけに基づいた、合理的で、純粋に形式的な部分が得られるだろう。これを形而上学(Metaphysica)と呼ぶ。

表にまとめてみると、次のようになるだろう。

対象 論理 自然 人間の自由
経験/形而下学 (経験的な論理学) 経験的な自然哲学 実践的な人間学
形式/形而上学 論理学 自然の形而上学 道徳哲学

現在、論理学は哲学から独立した別個の学問として扱われているし、自然哲学は科学にとってかわられている。なので、哲学と言えば、論理と現実の接点を厳密に明らかにしようとする認識・現象・言語にかかわる学問のことを指すか、人間の自由を考えることを指すことが多い。前者はアカデミックなものだと考えられているので、一般に流布する“哲学”と言えば、人間の自由*1を対象としたものを指すことが多いだろう。

しかし、その多くは個人の経験に基づく“人間学”に留まっているおり、普遍的な“道徳哲学”にまで昇華したものは少ない。

道徳形而上学の基礎づけ (光文社古典新訳文庫)

道徳形而上学の基礎づけ (光文社古典新訳文庫)

『人倫の形而上学の基礎付け』と訳されることもあるらしい。

*1:自由には「どう生きるべきか」という問題も含まれる