公平なケーキの切り分け方
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ケーキがあって、それを二人の少女の間で、できるだけ公平に分けるにはどうしたらよいだろうか。よく知られているように、一人の少女が自分で納得できるように切り分け、もう一人が先に選ぶのだ。不公平な切り方であれば、大きな方を取られしまい、自分には小さなケーキしか残らない。
一人の少女は相手に、〈お切りなさい、わたしが選ぶから〉あるいは〈切らせてください、あなたに選ばせてあげるから〉と言うであろう。そしてこの合意さえ成立すれば、それで十分なのである。
イギリスの一七世紀の思想家ハリントンは、この分配方法が権力の分配にも適切なものだと考えていた。『オシアナ』という正義が実現される理想的な共和国について語った書物においてハリントンはこう語っている。
偉大な哲学者たちが無益に論じていることが、二人の愚かな少女によって明らかにされる。国家のあらゆる謎でさえ、これで解かれる。それはただ分けることと選ぶことにのみ存するからである。
政治学というものをぼくはあまり知らないけれど、これは政治学の原理原則なのだろうと思う。
なぜ権力を分ける必要があるのか? 互いにチェックし、バランスさせるためです。そうすれば、公平になる。
たとえば、日本の原子力行政にはこれがなかったので、あの大事故を防げなかった。分割した権力は一見不安定だけれども、長期的に見れば安定している。どちらか一方に傾ききらず、絶えず揺れている天秤は、つり合っているに等しい。重機の扱いに老練なオペレーターと玉掛けは、荷を掛けるのにチェーンではなくワイヤーを使う。チェーンはワイヤーより取り扱いが楽だけれど、いつ切れるか目では判らない*1。安定の裏にある“目に見えない危機”は防ぎようがない。もっと恐れるべきだ。
去年の今日、この記事にはてブをつけていたらしい*2。ちょうどこの本を読んでいたところで、なんか因縁を感じると同時に、一年間を無駄に過ごしたか、とちょっと苦々しく思うこともある。
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お盆休みに読破したいなと思うけれど、最近本が積まれ気味。