『へうげもの』

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へうげもの(1) (モーニングKC (1487))

へうげもの(1) (モーニングKC (1487))

たぶん、「ひょうげもの」って読むんだと思う。

戦国時代が舞台のマンガだと、最近は『センゴク』なんかが思い浮かぶのだけど、こいつはそういうのとは一線を画している。だいたい、戦国時代なら当然描かれるはずの“武”がワキに追いやられて、“数寄”に主題が置かれているのがヘンテコ。

すき【数寄/数奇】

《「好き」と同語源。「数寄」「数奇」は当て字》風流・風雅に心を寄せること。また、茶の湯・生け花などの風流・風雅の道。「―者(しゃ)」

数寄 とは - コトバンク

よくわからないけれど、数寄者は好き勝手に生きているのがいい。見てて気持ちいい。でも、それは茨の道でもあるらしい。数寄の世界にもヘゲモニーというものがあり、それが俗世の権威・権力――出世、ひいては“武”――ともリンクしている。なので、自分の“好き”を貫くことは、出世の妨げになるどころか、時に死すら招く。

お世辞にもキレいな絵じゃないのだけど(これはわざとなんだろう)、線が濃く、やたらチカラがあり、構図が大胆で、読んでいるとグイグイ引っ張られるのを感じる。単色刷りなのに色鮮やかに感じるし、音すら聞こえそう。感触の表現に擬音語は欠かせないし、ハデな効果音もBGMもある。各話のサブタイトルは楽曲の題名をもじったモノ。ちょっと野蛮だったり湿っぽいところもあるけれど、「ひょうげて」(おちゃらけて)いて一笑まちがいなし……じゃないかな。

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主人公の古田織部はマイナー武将だけど、司馬遼太郎の『割って、城を』でちょっと有名かもしれない。こっちも面白いのでオススメ。

軍師二人 (講談社文庫)

軍師二人 (講談社文庫)

僕が読んだのは13巻までで、これから徳川時代に移っていくのだけど、古田織部が“武”と“数寄”のあいだでどう立ち回り、人生に決着を付けるのか楽しみ。