ソロンの改革

執筆日時:

プルタルコス『英雄伝』から順に引いてみる。

ソロンがアルコンとなる前のアテナイ

アテナイは)国内の地域の違いに応じて、市が分裂した。

山地党(貧民層)の人々は最も民主的で、反対に平地党(貴族層)の人々は最も少数政治(寡頭制、もしくは僭主制)派であった。そして第三に海岸党(富裕層)の人々は前二者の混合で、彼らの邪魔をしては、いずれか一方が優勢になるのを妨げていた。当時、貧しいものと富める者の不均衡はいわば頂点に達していて、国は危機に陥り、独裁政治によって強健でも発動しない限り、騒ぎが収まって平静になることはないだろうとすら思えた。

債権者の過酷さのために、子供を売ったり、亡命したりということが頻発したため、「誰か信頼できる人にアルコンになってもらい、そのうえで期限が過ぎても返済できない人々を解放し、土地の再分配を行い、国政を全面的に改めようとした。

ソロンの立法

ソロンはそれほど豊かな家に生まれなかったが、商業によって身を起こしたため、海岸党の人々からは同胞として歓迎され、山地党の人々からも正直な人として支持を受けた。

「平等は戦争を生まぬ」

「力と正義を合わせ用いて」

「人々が受け入れてくれる限りで最善の法律を」

"重荷下し"

借金の棒引きと、肉体を抵当にとることの禁止(1ムナ=73ドラクマの交換レートを1ムナ=100ドラクマに改めた"利下げ"政策であったともいう)。

「負債は帳消しにするが土地については手つかずにする」と友人に打ち明けたため、3人の友人が借金して土地を買うという手段に出た。そのためソロンは市民から非難を受けるが、自ら貸していた5タラント(15タラントとも言われる)を帳消しにしたため、その不正に対する不満はすぐさま解消された。しかし、庶民が期待していた土地の再分配を行わなかったため、借金を棒引きされた富裕者と、土地を分配されなかった困窮者の双方から人気を失った。

ドラコンの法律を全廃

殺人罪に関するものを除いて、「インクではなく血で書いた」と評されたドラコンによって制定された過酷な法律を全廃。

財産制

市民の財産に応じて、市民を4階級に分け、政治への参加を階級ごとに制限した。

  1. 貴族(Pentakosiomedimnos)
  2. 騎士(hippeis)
  3. 自作農(zeugital): 「2頭の牛を飼う者」の意。
  4. 貧困層(thétes)

訴訟権

すべてのアテナイ人が裁判を受ける権利を確立した。

「(理想的な国とは)被害にあってない人々も、被害を受けた人々同様、加害者を告訴し罰することのできる国だ」

一見なんでもないことだが、処罰付き繰り返し囚人のジレンマゲームなどでも、不正を罰する行動(サンクション:制裁)は、秩序を維持するには効果的であることが分かっている。

アレイオス・パゴス評議会

アルコン経験者評議会と設立したほか、4つの部族から100人ずつ選出して民会へ提出する前の議題を審議する評議会を設立。揺れの大きい民意に、重大な決定が影響されないように、寡頭制的な政体を整備。

政治的中立の禁止

国内騒乱の際にいずれの側にもくみせぬものは、市民権を喪失する。市民の政治への参加を実質的に強制。

そのほか

  1. 女相続人にその夫が近づけない場合、夫の近親者が彼女と交わってよい
  2. 女相続人を妻とした夫は、月に三回エッチしなくてはならない
  3. 持参金の廃止(金銭を目的とした婚姻を抑制する)
  4. 死者の悪口を言ってはならない
  5. 遺言制度の創設
  6. 女性の外出の規制(三枚以上の重ね着禁止、1オロボス以上の値の飲食物の持参禁止)
  7. 祭礼についての規制(大げさな哭礼の禁止、過度の副葬品の禁止、葬式でもないのに他家の墓へ参ることの禁止)
  8. 「もし父親が子に技術を習得させなかったならば、その子は父を扶養する義務を負わない」
  9. 遊女から生まれた子には、父親を扶養する義務はない
  10. 自由人である女を強姦した者には10ドラクマの過料を科す、ただし遊女の場合は無罪
  11. 自分の娘や姉妹を売ってはならない、ただし結婚前に男とエッチした女は除く
  12. オリーブ油以外の輸出禁止、破ったものにはアルコンが呪いをかける
  13. 市民の生活状況を調査、働かない者を処罰
  14. 公共の井戸が80m以内にある場合はそれを使え、そうでない場合は自分で掘れ、ただし20m掘って水が出なければ隣家から40L/日もらってよい(アテナイには水源がないので、自分で井戸を掘れということ)
  15. 木を植えるときは隣家の土地から1.5m離せ、ただしイチジクとオリーブは根っこが張るから3m離すこと
  16. 人にかみついた犬は、3キュペスの首輪をつけて引き渡すこと
  17. 永久亡命者として自国を捨てた者、商売のために一家をあげて移住した者以外は、帰化を認めない

法律の効力

ソロンは"アクソネス"と呼ばれる書き板に法律を書き記し、その効力を100年間とした。