国家の形式
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カントは、国家の形式を区別するには二つの方法があるといっている。
1. 権力を握る人の数で区別する方法――「支配の形式」
アリストテレス、ポリュビオスから延々と行われてきた方法で、ただ3つの可能性がある。
支配者の数 | アナロジー | 「徳」 | → | 「堕落」 |
---|---|---|---|---|
一人 | 父と息子 | 王政(Monarchy) | → | 専制・僭主制(Tyranity) |
少数 | 夫と妻 | 貴族政(Aristocracy) | → | 寡頭制(Oligarchy) |
多数 | 兄と弟 | 国制(Politia) | → | 衆愚政としての民主制(Democracy) |
2. 元首が民族をどのような方法で統治しているかで区別する方法――「統治の形式」
統治権と立法権が分離されているかどうかで区別する方法で、この方法を用いるとすべての政体は専制的であるかまたは共和的であるかという2種類で分けられる。
- 専制
統治権と立法権が一体になっている
- 共和制
統治権と立法権が分離されている。一般的に、近代的な憲法をもつ。
「統治の形式」で分類すると、(ナイーブな)直接民主主義は専制に分類される。なぜならば、統治権と立法権が分離されていないからだ。なので、共和的な政体はかならず代議制でなければならない。
統治権と立法権の分離――ケーキの公平な分け方
A. ここにケーキが一つ、少女が二人いる。ケーキを二つ、公平に分けるにはどうすればよいか。
Q. 片方がケーキを切り、もう一人が先にとった残りを受け取るようにすればよい。きっと、ケーキを切った少女は、なるべく公平にケーキを切ろうとするでしょう。
この方法は、ケーキが丸くても四角くても、変な形をしていて等分に切ることが難しくても、あらゆる場合で有効である点で優れている。大事なのは公平に処理しようとするインセンティブで、それで双方が納得できることだ。ケーキを切る人とケーキを先にもらう人、裁量と受益が分離されているからこそ、公平でありうる。
仮に大きなケーキを大勢できる場合を考えよう。専制君主なら、自分の分だけ大きく切ることができる。直接民主制ならば、奪い合になるだろう。代議制民主主義(共和制)であれば、代表者は公平に切ることを要請され、圧力を受け、結果的により公平にケーキを切り分けるだろう。このとき、代表者は最後にもらうのが理想的だ。
"宰相"の「宰」は、家畜を屠殺して、その肉を公平に切り分けることを意味するという。すなわち、政治で肝要なのは、公平な分配だ。仮に宰相に徳がなくても、統治権と立法権が分離した制度ならば、より公平な分配を行うインセンティブが生じる。
永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)
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