だるろぐ

明日できることは、今日しない。

贈与

『ヘロドトス 歴史 中』

かの有名なマラトンの戦いから数えること三代の昔、ラケダイモンにグラウコスという者がいた。この者は若いながらあらゆることに秀でていたが、こと正義を重んずるという点では並ぶ者がない。正義の前では利益どころか命すら顧みないというありさまで、節義…

『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』

文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ (中公新書)作者: 小林登志子出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2016/09/09メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る手ぶらで外出たけどなぜかヒマができたので、時間を潰すためにテキトーな明屋書店…

相互贈与の天秤

相互贈与においては、贈与が“キッチリ”清算されてはならない。清算された相互贈与は、そこで関係が止まってしまう。再びその歯車を回すためには、また最初の贈与――“命がけの跳躍”とでもいうべき最初の贈与――からやり直さなければならなくなる。贈与の価値は…

『ヒエロン――または僭主的な人』

クセノポン小品集 (西洋古典叢書)作者: クセノポン,松本仁助出版社/メーカー: 京都大学学術出版会発売日: 2000/06メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る『クセノポン小品集 (西洋古典叢書)』の一遍。この本に収録されている『ラ…

文化について

「文化」というとき、伝統社会における文化と近代社会における文化では、意味に本質的な違いがある。 伝統的社会 社会的に伝えられる行動様式、技術、信念、制度、さらに一つの社会ないしコミュニティを特徴づけるような人間の働きと思想によって生み出され…

『一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか』

一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (ちくま選書)作者: 山我哲雄出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/08/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 人間の行動原則の正し手を、 宗教に求めたユダヤ人。 哲学に…

『市場の倫理 統治の倫理』

市場の倫理 統治の倫理作者: ジェインジェイコブズ,Jane Jacobs,香西泰出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 1998/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見るこの本を読んだのは13年ぶり。最初に読んだのは大学の頃で…

『贈与の文化史―16世紀フランスにおける』

贈与の文化史―16世紀フランスにおける作者: ナタリー・Z.デーヴィス,Natalie Zemon Davis,宮下志朗出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2007/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 目次 1. 贈与の精神 2. 贈与の観光と公共の…

出版と贈与

共有されるべきものとしての知識 「学問とは神の恵みであって、売ることはできない」中世の箴言 中世ヨーロッパでは、知識は独占してはいけないものであり、ましてや売ることなど許されないものだった。修道院では写本作業が信心深い行為とされ、慈善として…

初期贈与と贈与規範に関する箴言

能予而無取者、天地之配也。『管子』形勢解 タダで受け取ったのだから、タダであげるがいい『ローマ人への手紙』 市民が互いに感謝の気持ちを強め、それを維持するために、もっとも身近な場所に、三美神の神殿が設けられたのである。というのも、それこそが…

権威と権力

近代共和主義の源流―ジェイムズ・ハリントンの生涯と思想作者: 浅沼和典出版社/メーカー: 人間の科学新社発売日: 2001/05メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログを見る ハリントンは、権威と権力とは明確に区別されるべきものと考え、ホッブズ…

「本来について考える」について考える

法学とは、経験ではなく定義に、事実にではなく厳密な論理的証明に依拠する学問に、すなわち現実の諸問題よりもむしろ純粋な妥当性の諸問題をあつかう学問に属しているのである。――ライプニッツ 「本来」とは何か よく法律の議論で、本来は〜である、という…

「三人の子どもと一本の笛」

一本の笛をめぐって言い争っている三人の子どもがいる。アンは楽器を弾くのが得意で、三人のなかで唯一笛を吹くことができる。 その腕前は確かで、彼女の吹く笛の音が一番美しい。 ほかの二人もそれは認めている。ボブは貧乏で、三人のなかで唯一おもちゃを…

新しい共和主義

試みに、政治的自由と経済的自由というベクトルをもうけてみた。孤立した個人は、サルの自由をもつ(四つの自由 - だるろぐ)。しかし、ヒトは共同できるほうがより多くの自由を獲得できるはずだ。古典的共和主義が重視したのは、この自由だ。とくに古代ロー…

「マチ」と「ムラ」

孤立した個人が少しの制約と引換に、より多くの自由を求めて共同生活をはじめる。これが「ムラ」だ。「ムラ」では狩猟・採集、農業(第一次産業)が営まれている。「ムラ」の語源は、おそらく「群れ(ムレ)」だろう。移動する「ムラ」が「群れ」で、定住し…

なぜお年寄りを大切にすべきか

余裕があるなら、みんなお年よりは大事にしたい。日本人である以上、日本人の死に様には美があってほしいと願います。だが現実はこんな夢のような社会保障は続かない。冒頭にも書いたとおり、そんなことは誰でも分かっているんです。 いま問題になっているの…

『市民政府論』

貨幣の思想史―お金について考えた人びと (新潮選書)作者: 内山節出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (9件) を見る『貨幣の思想史』でこれが取り扱われているなんて、意外だなと思った。け…

ハウとウトゥ、贈与負債の管理。

私はあなたにハウについて語ろう。 ハウは吹きわたる風ではない。全くそんなものではない。 仮にあなたがあるタオンガ(贈り物)を持っていて、これを私に与えるとしよう。あなたはそれに価格をつけないで、それを私に与えるのである。このことに関して我々…

アテにするということ。

「交換」世界は、強制力の伴った信頼関係でつながっている。それを僕は「アテ」と呼ぶことにしている(「私は頼られるのは好きだが、あてにされるのは嫌いなんだ」 - だるろぐ)。一方、「贈与」世界は「タヨリ」でつながっている。小さな世界のルールである…

「私は頼られるのは好きだが、あてにされるのは嫌いなんだ」

夏休み。遊んで、食べて、寝て、笑って、宿題のことなどさっぱり忘れてしまっていた内田は、千秋に宿題を写させてくれとせがむが、すげなく断られる。それでもあきらめずにマコちゃんをけしかけてさらなる説得を試みるのだが……千秋は眠そうな声でこう突き放…

価値を生む“双頭の蛇”

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイが、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の株式を新たに取得したことが15日分かった。小売り大手ウォルマート・ストアーズやIT(情報技術)のIBM株も買い増した…

「貨幣とは何かを問われた学徒は」

貨幣とは何かを問われた学徒は、月並みの答えをする以外に手はない。貨幣はその機能によって定義される――貨幣として使用されるものが貨幣であると。貨幣とは、貨幣が行うところのものである。そして貨幣の機能には三つある。――計算手段(ヴィクセルの言葉で…

相互贈与と経済的格差

パレートの法則(パレートのほうそく)とは、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説。80:20の法則、ばらつきの法則などと呼ばれることもあるが、本来は別のものである。イタリアの経済学者ヴィルフレ…

贈与、交換、豊かさとピエロとしての自由

社会化された「贈与」(プライベートからパブリックへ) 形式化された「贈与」(前例に従った贈与。「あげたい」という純粋な気持ちの発露ではなく、ある種惰性としての贈与) 規格化された「贈与」(与えられたインプットにはそれに応じたアウトプットが与…

なぜ相互に贈与(交換)するのか

これまで「なぜ相互に贈与(交換)するのか」についてはあまり考えてこなかったので、今日はそれを考える。 異なるモノをやりとりする 異なるモノをやりとりする理由は、わかりやすい。たとえば、作りすぎて余った筑前煮を隣近所で贈答(交換)して肉じゃが…

藩札とお金の話

伊予・松山城の天守閣には、刀剣や甲冑などが展示されている。そのなかでも興味を引いたのが藩札。今まで見たことがなかったんだよね。たかだかこんな紙っぺらに価値があるだなんて不思議。僕達が実際に手に取ることのできるお金には、二つの種類がある。硬…

一対一の贈与関係の拡張と集団的贈与関係

参照: 純粋贈与について - だるろぐ 一対一の贈与関係 贈与関係が継続される場合、そこには「与えたら返す」という規範(ルール)が成立している。このルールには、有形無形の罰則(制裁)がともなう。これは直接的な報復であるとは限らない。贈与関係に双方…

初期贈与と純粋贈与

一般的な贈与循環について - だるろぐ 純粋贈与について - だるろぐ 初回贈与はかならず純粋贈与であるけれど、純粋贈与は初回贈与であるとは限らない。これまではおもに等価交換としての贈与循環を考えてきたけれど、返礼の際に受け取った以上のモノを与え…

一般的な贈与循環について

繰り返された贈与の過程について - だるろぐ の続きのようなもの。 特殊な贈与循環 X と Y が贈与することを考える。互いに互いの贈与に応えていけば、贈与の循環が生じる。:このときつまり、互いに同じだけ与え合うとするならば、初期の純粋贈与 は循環が…

贈与と交換の違いについての素描

贈与過程が存在するならば、与えたものに対して一定の見返りを期待できる。ただし、与えるときにはさも見返りを期待しないかのような振る舞いが必要だ。でなければ、無粋であろう。しかし交換過程では、この振る舞いは無用であるところか、奇妙にさえ見える…

繰り返された贈与の過程について

資本主義的生産を行う社会では、その富は、商品の巨大な蓄積として現われる。その最小単位は一商品ということになる。従って、我々の資本主義的生産様式の考察は、一商品の分析を以て始めねばならない。 マルクスは経済の分析を「商品」から始めたけれど、こ…

純粋贈与について

「経済」は、「交換」で成り立っている。「交換」は、「相互贈与」を基礎としている。「相互贈与」が「交換」に発展する過程については、いつか説明する時が来ると思う。ただ、アカの他人同士が出会えば即「交換」に至る、という経済学の前提はおかしいとだ…